12/31
長らく放置していた。
どうせ読者も居ないので、反省するつもりもないが。
仕事を納め、一年を振り返り、ただ思う事は1つ。
まごうことなき人生最悪の一年だったという事。
私はまだ過去の失敗を乗り越えられず、他者との関わりを捨て去ろうとしている。利用出来る友人は、僅かながら残したままで。
人間の失敗作、吹き溜まりの廃棄物、底無しのクズ、それが今の私。
先輩の言葉も、同僚も、友人も、家族も、何もかも全てが気色悪い。顔色を伺う行為だけで吐き気がする。
何もかもが嫌になり、そして惨めに独りで死んでいくのだろう。
叶うならば、私から幸福を奪った人よ
可能な限り惨めに死んで下さい
好きな場所を見つけた。
街の南、誰も来ない夜の岬。
秋桜を見ようとしたが既に枯れており、代わりに見つけた世界の果て。
夜、その場所に立つと光が見えた。
灯台か、あるいは漁業用の電灯か。
向こう側の岸に、確かにヒトが灯した灯りがあった。
見る場所は防波堤の上。
雨上がりの濡れたコンクリートの上で寒さに震えながら、私はその光をじっと見つめた。
防波堤の下は崖、頭から落ちれば恐らく死ねる。
人が灯す弱い灯りと、落ちれば直ぐに死ねる崖の上は居心地が良かった。
どうせ誰も来ない、私はそう踏んだ。
静寂の中、遠くから発砲音のような音が聞こえる。定期的に聞こえるので、恐らく周期的なものだ。
そのささやかな喧騒に、牙を立ててやろうと私は意気込む。寒さに喉は震え、喉も乾いている。
けれど、歌いたかった。
━━━満足した。
小一時間程で、私は虚しい歌を止めた。
大声で歌おうが、誰も咎める者は居ない。
人生で最も心地良い時間だった。
地獄のような私の一年を、たった一夜で塗りつぶせる程に。
その時だけは、私は私であることを忘れられたのだ。
年の暮れ、最後の捨て台詞。
幸福を奪った者へ、さっさと死んで下さい
私はいつかまた、あの岬へ。
11/13
サルカズケントゥリオ。
響きの良かった言葉、ただそれだけ。
レイが脱皮した。
飼い始めて2ヶ月、3ヶ月くらい経っただろうか。
ある時、突然便秘になったのだ。
何があった、マットを詰まらせたかと思ったが、脱皮前で色々と不都合があったらしい。
通常、餌を与えれば1日〜2日で、しかもわざわざ買ってやった流木の上にフンをする。
レオパのフンは尿酸という白い米粒のような塊と、ドックフードのような縦長のフン部分の2つから構成される。
これは最近知って驚いたが、フンと言うのは水分が無ければ臭わないらしい。
その為、蓋を開けてフンが湿っていたら当然臭い。純粋なフンの臭いがする。
乾いていれば回収もそこまで面倒でなく、本当に臭いもしないのだ。
まあ、自分の排泄物から出た汁が床材に染み込んでいる、なんて気味が悪いと思うので、見かけ次第掃除するようにはしているが。
さて、レイの脱皮は秘密裏に行われていた。
故に、私はその姿を見てはいない。
表皮が白く濁っていたその姿しか見ていないものの、奴の成長をまた一つ見る事が出来、満足だ。
……などと、取り留めのない文章になってしまった。
私自身の気分は晴れることは無いだろうが、
レイとの逢瀬は私にとっても貴重で、得がたい経験であるということに間違いない。
11/7
日記。
一日の行動や発生した事象について書に纏め、記録とする行為、或いはその文書の名称。
私は、どうも継続するという行為に抵抗、或いは不適正であるらしい。
と言うのも、残業時間の著しい増加、及び最近始めた運動行為についての時間に、私の筆を摂る指はその職務を忘れていたような節があった。
そして無意味にも、私は街を散策する趣味がある。
それくらいでしか日常における色を見出す事が出来ないからだ。
今日は畏れ多くも、街を一周するような大規模な『散歩』をした。距離については測ってもいないが、親指の爪が食い込み継続的な痛みを発生させる程度の距離を歩いたつもりだ。
歩く時、私は常に音楽に身を委ねる。
酷く耳のつんざくような音で、言葉で、執拗なまでに私の脳を侵食してくる音楽家達の作品に、心を許す。
例え現実がいかに悲惨で、どうしようも無いものだとしても、あの鼓膜の振動は美しかった。
曲を聴く時、私は全ての作品をミックスした状態で拝聴する。例えばそれは、女性歌手の力強い声、或いはゲームの作中歌。趣味の範囲だけは多岐に渡るが、それに適合する事に至る対話が可能な人間はごく限られている。
極端に話題を変えるが、私は時々、考える事がある。
DNAの塩基配列によって、我々はその肉体的な特徴が形作られる。それは生物である限り、逃れようのない事実だ。
幼い頃から生物学には興味があったが、怠惰な性格が起因して研究に携わった事は無い。故にこの考えも、研究の実情する知らない男の、無意味な与太話に過ぎない。
DNAの塩基配列は、ATCGの4種類で記述される。
個体、血統によって一部の誤差はあれど、生物はその四文字の配列が無数に並ぶ事によって、そのたった一つの種として認識される。原則として、同種で無ければ交配出来ないというルールがある事からも、種としての塩基配列の部分の末端に血統のDNAが存在するのは間違いない。
種としての塩基を携帯とするならば、血統のDNAはストラップのようなもの。それ故に、DNAの完全一致は交配の絶対条件たり得ない。
虎とライオンは交配しライガー、タイゴンを産むが、それらは人工的なものであり、仮に個体数を著しく増やしたとしても、生殖能力の無い性質上その種は繁栄することは無い。
別種で交配して生殖能力を持つ事象は、限りなく生物学的に配列の近しい存在(=亜種)であるのではないか、と私は推測している。
さて。
つまるところ、DNAの塩基配列は個体を形成する指針=設計図。私達の、この星の生物の身体は常に緻密な設計図によって、末路まで決められている。
ならば設計図の製作者は、少なからず存在するはずだ。我々にとってそれは造物主、及び『神』と呼称される存在になる。
その定義における『神』は、少なくとも全能では無い。
『神』と呼ばれる者が仮に我々を設計し、全能であるとしたら、そも設計という行為に必要は無い。複雑な構造を作る必要無く生物は存在出来る、と定義すれば良いだけの話だ。
何らかの理由で我々の世界を生み出し、維持しているその存在が何をしているのかは一切わからない。
例えば、実験。
神は完全な世界を作る為に、手始めに生態系のある我々世界を作り、その行く末のデータを採取している段階、という説。
後もう1つ考えられるのは、そうあれかしと決められているから。世界の存続は絶対の条件であると決められていて、それを決めた者(=神)による運営と静観。
彼等は何処で観測しているのだろうか?
最も、観測しているかどうかすら不明だが、ここにおける『神』は常に我々を監視している事とする。観測していないのであれば、恐らくそれは『神』に近い姿を持っただけの、そして我々を創っただけの上位種であるだけ、という結論になる。
候補としては2つ。
『外宇宙』と『隣接次元』。
とはいえ、これは私の考察と言うよりは既定の道理に過ぎない。
外宇宙とは、つまり我々の観測の及ばない宇宙の外の事だ。宇宙は絶えず膨張している、という話を聞いた事がある。
膨張しているという学説を採用するのであれば、当然拡がり続ける『果て』が存在する。
その外側がブラックホールであれ、音も光もない空間すら存在しない世界であれ、その境界は存在する。私は勝手に、境界の外側は途方もない質量と密度を誇る暗闇の壁だと考えていた。
実際の所は不明だが、我々の宇宙の外側に何があるか分からない以上、そこに存在すると断言する事は出来ない。だが、我々の宇宙が境界を隔て存在出来ているという事は、その外側の更に途方も無い距離を経た先、ヴァルハラが存在する可能性も、そこに別の宇宙が拡がっている可能性も否定出来ない。『外宇宙』、それが第一の候補。
第二の候補は、『隣接次元』。
そもそも、人間に知覚できないものは無数に在る。紫外線や超音波、蛾のフェロモン、その他にも様々だ。
もし仮に、この宇宙に存在しない生命体に似た何かだけが知覚できるモノがあるとしたらどうだろうか。
我々の存在する空間に裏側の座標(例えばXYZ軸の他にA軸が存在するようなもの)が存在し、それらに『存在する』と定義出来るような能力を彼等が所持している可能性だ。
クトゥルフ神話に、『ヨグ=ソトース』という神性がいる。クトゥルフ神話内におけるNO.2とも呼べるそれは、無数の光の玉の集合体のような見た目をした旧神と呼ばれる種族で、『副王』と呼称される。彼の規模は膨大であり、『全ての空間に隣接している』という特徴を持つ。つまり、彼はデータ上、その神話の世界において全ての物体のすぐ側に存在している事になる。当然、この宇宙を全てヨグ=ソトースの肉体で埋め尽くさない限りそれはなし得ないが、実際に作中の世界ではそうはなっていない。つまり、『何か』を隔てた空間外の場所に、彼は存在し隣接している。
それと似たような感覚で、『神』は我々の存在する宇宙のA軸の座標にその視点を置いているのではないか、という点だ。
……ここまで書いておきながら、この説はつまらない物であると我ながら自覚している。
私が言っている事はつまる所、
『この宇宙に我々の造物主は観測出来ないので、
もし居るとすれば宇宙内のA座標か、もしくは他のどこかです』
と言っているようなもの。
『答えはAかそれ以外です』
なんて、雑把にも程がある表現だ。
神は繁栄しすぎた我々を滅ぼすかもしれない。或いは、面白がって観客となるかも。
だが、神がいかに造物主とて、我々を滅ぼす権限を持っているという確固たる根拠は存在しない。
根拠の無い机上の空論でしかないが、ここに書き留めておく。
いつか私が見返した時、無邪気にほくそ笑むくらいの文にはなっただろうか。
10/25
仕事に関して、やや昇進したようだ。
昇給もするだろう、だからといって何も変わらないが。
あと、上司に初めて責任を押し付けられた。
詳しくは記さないが、以前話した全く尊敬に値しない上司E、及び尊敬できる上司A.Bが私の上には存在する。
私とEで半々程度の失態を犯していた。
失態と言ってもプロジェクト自体は進行可能なのだが、これ以外の案件で同様のケースがあればプロジェクトそのものが頓挫しかねない、重要なミスだ。
ミスの発端は私だ。間違いない。
役所への確認において知らない事があった点、未熟だった点においては認める他ない。
だが、全体の把握に関する業務はEの仕事だった。
Eが言うには、
『私〔ブログ主〕が見ていると思ったから』
気付けば周囲も失敗ムード、私をなだめる雰囲気になった。
案件全体の把握に関して、Eは対応する場所に、私はその足掛かりの業務でのさわりの部分で電話のみ軽くしていた。しかもあろうことか、私の掛かる部分以外は全てミスも無かったのだ。
こんな事を書いてもどうしようもない。だが、
奴は自分にも非がある旨の話を一切しなかった。
そして私は残業、奴は定時でそそくさと逃げた。
次似たような話があっても、私は奴を庇わない。
憤りの多い一日となった。
明日も、その対応で追われるだろう。
ああ、憎たらしい。
上司への憎悪とは裏腹に、私の精神状態は変わりつつあった。
元カノへの未練は、いつまでも消えない。
だが、いつの間にか共生出来る様になった。
無心に走り、読書に耽る。
仕事に嵌り、安らぎを愛する。
やがて悲しみも薄れ、消えていくのだろう。
いつか忘れる事が、あるのだろうか。
10/19
雑記
真の上司が私の事務所にやってきた。
これからは直で仕事を指示、指摘してくれる。
仕事に没頭したかったところだ、丁度いい。
残業に抵抗は無い。
仕事は無いが、上が帰らないから帰りにくい環境が不快なだけだ。
仕事をしている間は嫌な事も忘れられるだろうから。
身体も問題ない。
食事と入浴、歯磨きとスキンケアさえ出来れば人間は生きていける。
部屋の片付けもたまにでいい。
今はとにかく、大事な思い出すら忘れる程仕事に没頭したいのだ。
休みの日に出るのも嫌いじゃない。
他の社員に優越感を抱きながら仕事出来るからだ。
社畜じゃない。
ただ今はもう、全部忘れたい。
レイは学習能力が高い。
彼は私がケージを叩くと餌だと思って近寄った事があったが、今はもう無反応になってしまっている。
私の事を日々学習しているのだ。
中々シェルターから出てこない。
餌をやるとパクツイた後、一瞬で帰るからだ。
だが元気ではあるようで、2日に1度、3粒をやるようにしている。
とにかく彼を、手に乗せたい。
方法については、まだ思案中だ。
10/15
風邪をひいた。
家に体温計は無いので推測の域を出ないのだが、恐らく高熱である。資格試験前だというのに、愛想の無い身体だと呆れる。
家事をしようにも、体が言うことを聞かず、
だからといってゆったりしているかと言われれば、
気分も深く澱んでいる。
後輩が車を買った。
恐る恐る運転に同乗したが、やや危なっかしい気を感じたものの、壊滅的という感想は得ていない。
やがては通常の、なんの面白みも無い運転手になるだろう。
二人で話しているうち、私は気付いた。
やはり、私の脳はこの時間が何よりも程度の低い、単調な、そして不要な時間であると判断している。
勉強、と銘打っては居るものの不快だと心底感じた。
他者と接するメリットは薄い。
我を隠さず、思うがまま振る舞う。
それが可能な相手との対話こそが、不快でない良質な唯一の娯楽であり、私にとってのよすがだった。
私は機会に恵まれたが、それを悉く廃棄した。
レイが餌に食いつかなくなった。
ハンドリングをした後はどうにも食事を拒否する傾向にある。シェルターに戻してやり、暫く餌を構えていると漸く食べた。
観察して分かったが、恐らくレイはオスのヒョウモントカゲモドキだ。
素人目の判断、正確では無いにしろ、一旦は『彼』と呼称しようと思う。
同居人の素性が、また少し割れた。
どうにも笑えないのは、気のせいなのだろうか。
10/12
取り留めのない1日だった。
私には上司がいるが、そのうちの直属と言える男が本当に笑えない。言動の一つ一つが人の神経を逆撫でするようで、心から不快に思っている。
鬱陶しい小バエのような男である。
何も考えず一日を過ごし、家に戻る。
もうすぐ資格試験だと言うのに、書を読む時間もすぐ終わった。失恋してからというもの、何にもモチベーションを抱けなくなった事に起因するのだろうか。
毎日、見る夢に必ず何処かに彼女は出て来る。
私もそれが夢だと気付かずに過ごす。
夢で何度でも会い、何度でも歓喜し、何度でも幸せを享受した。
だが夜が開けるとそこにアイツは居ない。
私が第三者なら当然のように嘲り、謗るだろう。
未練だと。
気色の悪い思いだと。
私は夢に囚われている。
悪夢より惨たらしい、手に入る事の無い幸福の夢だ。
いつになったら、この呪いは解けるのだろう。
いつになれば、長い夢から覚めるのだろう。
このくだらない独白に意味など無い。
見る者も私しかいない。
故にこそ、私は私のこの恥ずかしい思いを文字にし、戒めとすることで私を保たなければならない。
あの時、選択さえ間違えなければ。
あの時、もっと注意していれば。
もっと、私がしっかりしていれば。
掘り出すほどに脳内を巡る、後悔と自責。
昔日の現実は夢となり、現在を侵食する。
それでも私は、折れない。
例えどれだけ辛かろうと、己を律する。
彼女が戻って来る事は、恐らく無いだろう。
連絡も途絶え、最後の会話では敬語まで使われていた。嘗ては好きで、大事で、同じだったのに。
それでも、私は足掻く。
彼女は生きている。
私もまだ生きている。
チャンスが無いという事はありえない。
たとえそれがどれだけ苦しい道で、可能性が低いとしても。
彼女が再び認めてくれるようになれるよう、可能な限り足掻く。
己を律し、再燃する。
恋愛はしない、等と嘯いたものの、
私は未だに彼女のことを忘れたくない。
どれだけ苦しい道のりとなろうと、一縷の希望の糸はまだ途切れず、私の前に垂れ下がっている。
どれだけ長い道のりか、想像もつかない。
それでも私はこの残火を絶やさず、繋いでいこうと思う。
別の人を見つけて幸せになった、となればそれでもいいのだ。
例え私を捨てた女だとしても、私は彼女に幸せになって欲しいと心から願っている。
どうか、彼女の道行に祝福のあらんことを。
ひ